GUMKA工房記

GUMKAミニチュアの備忘録を兼ねた日常記です。

1812年の雪(モスクワからの敗走)

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 ナポレオンがロシア遠征を計画しているとき、フランス軍参謀本部のポントン工兵大佐は、交換将校としてロシアに留学した経験から、皇帝陛下にひざまづき、敢えて意見具申します。「広大なロシアが舞台では戦争の条件が全く異なっております。無人の地に進撃してみても、食糧も馬糧も見つけることはできませぬ。冬が到来し、零下二十度から三十度の寒気に兵士が耐えられるとも思えませぬ。フランスと陛下御自身の安寧のため、なにとぞこの戦争は諦められますように」

 ルクレール大尉参謀も、様々な情報を分析し、ある結論に到達します。「ロシアで戦える者はロシア人だけである」しかし、ナポレオンは開戦を決意し、彼らの予想どおり大敗しました。



 本の傷み具合を見てもらえばわかるように、何度も読み返しています。ナポレオンの戦史関連の書籍は多く、文学作品も含めて数々の名著があります。その中でもロシア遠征のみ、しかも、モスクワ占領後からの敗走に主眼を置いた内容で、基本的な歴史知識さえあれば、読み易いという本は、そうそうありません。最初から通しで読んでもおもしろいのですが、各項目が完結した小さなエピソードになっており、どこから読むこともできます。

 寒さに関する話は、大戦中の東部戦線でも同じなので、モデラーでも興味がわくと思います。長女が学校の課題でトルストイの「戦争と平和」を読む羽目になったとき、予備知識として、この本を進めたところ、怖さが増したと言っておりました。


 一言で言えば対ロシア戦は、ナポレオン大遠征軍の身の丈を越えた戦争でした。そもそも戦争の大義名分は曖昧で、戦場は何もない広大なロシアの大地。兵員輸送車や鉄道などない時代に想像を超えた広い土地は行軍するだけで兵士の体力と士気を奪います。

 この時代ですから、満足な補給システムは確立されておらず、慢性的な食料不足に陥り、兵士たちは、飢えと寒さで次々と倒れます。

 敗走兵に襲いかかり、身の回りの金品を奪うコサックや武装住民、寒さに無知なばかりに、一夜で凍死してしまう本国からの補充部隊。逃走と略奪が横行する中、人間として職務を全うしようとする軍医や軍人たち。飢えと疲弊の絶望の中でも、最後の力を振り絞り、ナポレオンに「皇帝陛下、万歳!」を叫び、死んでいく兵士たち。それら全てが淡々と描かれた作品です。


これを読めば、今の不況や不安定な社会情勢なんぞ、
たいしたことないと思えます。